一般社団法人の事務所

一般社団法人の「主たる事務所」

一般社団法人の定款では、主たる事務所の所在地は、必要的記載事項として必ず記載しなければなりません。

もっとも、ここでいう所在地というのは最小行政区画までを記載すればよいので、たとえば「東京都新宿区」まででも構いません。(ただし、登記上の所在地は何丁目何番何号までの記載を求められます)

主たる事務所の所在地を最小行政区画に留めるメリット

定款上の主たる事務所の所在地を最小行政区画に留めると、後日、もし同一行政区区画内で事務所の所在地を移転するとき、定款の変更を行う必要がありません。

会社や法人を運営したご経験のない方ですと、定款変更が不要というのがどのようなメリットになるのかイメージしにくいかもしれませんが、定款変更には社員総会の特別決議が要求されます。そのため、多数の社員によって構成される一般社団法人においては、わざわざ総会を開催しなければならない手間が生じます。

数ブロック先の建物への移転で総会決議が必要になる

一般社団法人を設立して運営が始まった後で、数ブロック隣の建物に事務所を置くのに都合のよい物件が見つかった。なとどいうとき、社員(構成員)が集まって総会を開かなければ動けないとなると、なかなかに面倒なものです。

そこで、通常は所在地に番地等まで全て記載するのでなく、最小行政区画に留める場合が多いのです。留めておけば、理事会などを開催して意思決定を行うだけで可能となります。(ただし、この場合でも本店所在地の登記変更はしなければなりません)

一般社団法人の「従たる事務所」

一般社団法人は、上記で触れた主たる事務所とは別に、従たる事務所の設置も可能です。(任意的記載事項であるため、従たる事務所を設置しなければ、そもそも定款に記載する必要もありません)

これは会社でいえば支店のような扱いとなるべき事務所のことですから、会社同様、従たる事務所の所在地も登記しなければなりません。(便宜上の従たる事務所であり、登記までは行わないという場合を除く)

一般社団法人の名称

一般社団法人の名称は、それまで任意的に活動していた団体名に、「一般社団法人」を付加することが多いのですが、これは名称中に一般社団法人を入れなければならないという、一般社団法人法第5条の規定からも要請されるものです。

名称に使用できる文字

名称には、漢字、ひらがな、カタカナのほか、ローマ字(大文字も小文字も可)や数字、一定の記号も使うことができます。

記号で使えるのは、&(アンパサンド)、ー(ハイフン)、.(ピリオド)、,(カンマ)、・(中黒)、’(アポストロフィー)ですが、名称の最初と最後には原則、使うことができません(ただしピリオドは省略記号として最後に付けることは可能です)

定款の必要的記載事項

一般社団法人の名称は、定款の必要的記載事項(必ず記載しなければならない事項)です。したがって、一般社団法人の定款においては、冒頭の第1条で「当法人は、一般社団法人ABCあいうえおと称する」あんどと記載するのが一般的です。

英文名も存在する(決める)とき

一般社団法人の名称を日本語で決めるものの、英文で表記するときの名称も定款で定めておきたいときは、「当法人は、一般社団法人○○と称し、英文ではXXXXXXと表示する」などと併記します。ただし、正式名称はあくまで前者の日本語になります。

途中で名称を変えるとき

最初に決めた名称が、途中でどうしても法人の活動内容などと合わなくなってしまい、変更することになると、手続きは意外と大変です。

名称は前述のとおり、定款の必要的記載事項です。そのため定款変更を行わなければならず、社員総会の開催、特別決議での変更を求められます。

変更した名称は登記しなければなりませんので、法務局への変更登記の手続きも必要となり、登録免許税などがかかります。

また、一番手間がかかるのは、名称が変わったことによって様々な役所や取引先などへ、名称変更の届出や通知を行わなければならなくなることです。

一般社団法人とNPO法人

一般社団法人とNPO法人の違い

一般社団法人もNPO法人も、非営利を目的とした法人という意味では共通します。では、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。相違点は、わかるようでわかりにくく、そのためどちらの法人を設立・運営していくべきか、悩む人もまた多いようです。

多くの人に参加してもらうのか否か

一番大きな違いは、社員となる条件設定の有無ではないでしょうか。一般社団法人は、定款に定めることによって構成員たる社員となる条件を設定することが可能です。対して、NPO法人は来るものを拒まず、法人の目的に賛同した誰もが会員となって、一緒に活動していくための法人であって、定款に条件などを定めることは原則的にできません。

多くの賛同者とともに運営していくという性格は、設立時に最低必要となる社員数の違いにも表れています。一般社団法人は2人の社員がいれば設立が可能ですが、NPO法人は10人以上の社員を必要とします。

公益目的以外に共益目的の設立が可能か否か

一般社団法人であれば、公益目的以外にも、同じ趣味の者同士の親睦を深める共益を目的とした法人も設立することができます。これに対して、NPO法人は公益目的のみ認められ、共益的な目的での設立はできません。

設立に行政庁の認証が必要か否か

一般社団法人は準則主義をとり、定款の認証と法務局での設立登記を済ませれば設立することができます。これに対して、NPO法人は定款の認証は不要であるものの、設立時に行政庁の認証手続きが必要となります。認証のために、一般社団法人と比較して「設立趣意書」や「事業計画書」など、多くの書類を作成しなければなりません。さらに、縦覧期間や審査期間など、認証手続きに数カ月を要します。

設置が必要な役員数の違い

一般社団法人は、最低限、理事1名を設置すれば設立・運営が可能な法人です。これに対して、NPO法人は理事3名以上、監事1名以上を設置する必要があります。

さらに、NPO法人はそれぞれの役員につき、配偶者や3親等以内の親族が1/3を超えて含まれてはいけないという決まりがあります。親族同士でNPO法人を設立することは、この人数制限があるため比較的難しくなります。一方、一般社団法人にはこのような制限がありませんので、夫婦2人で設立することも可能です。

事業報告書の提出が必要か否か

NPO法人は、毎事業年度終了後3カ月以内に、事業報告書その他の書類を行政庁へ提出しなければなりません。この書類の中には、財産目録や貸借対照表、収支計算書なども含まれます。提出された書類に基づく情報は、市民に対して公開されます。対して、一般社団法人は官報などに貸借対照表を公告する必要はありますが、株式会社と同様の手続きで済むために比較的容易に行なうことができます。

一般社団法人と一般財団法人

一般社団法人と一般財団法人の違い

一般社団法人は、人の集まりである「社団」に法人格を与えるための仕組みです。一方、一般財団法人は財産の集まりである「財団」に法人格を与えるための仕組みです。

財産に法人格を与えるというのは、ちょっとイメージがしにくいかもしれません。例を挙げると、多額の財産を持つ人がいて、その人が財産の一部を、何か社会の為に役立てるような目的に使おうと思ったとします。このような場合に、一部財産を拠出することにより財団法人を設立して、その目的に沿った財産の運用を評議員会や理事会が決めていく、そんな組織が財団法人です。つまり、財産に法人格を与えるとはいっても、それを実際に運営していくのは人間である評議員や理事ということです。

設立時の財産額が異なる

一般社団法人は、設立時に財産を拠出しなくとも設立が可能です。一方、一般財団法人は最低300万円を拠出しなければ設立できません。これは上記で触れたように、財団は財産の集合に法人格を与えるための仕組みだからです。

社員の有無が異なる

一般社団法人は、人の集まりに法人格を与えるための仕組みです。そのため、最低でも2人以上の社員がいなければ設立ができません。一方、一般財団法人は財産自体に法人格を与えますので、社員は必要ありません。つまり、社員が0人でも設立ができる法人形態です。

役員や機関が異なる

一般社団法人は、上記のように2人の社員のみで設立が可能です。一方、財団法人は社員が存在せず、拠出された財産をもとに理事が法人の運営を行なっていくことになります。理事は3名以上必要で、理事会を設置しなければなりません。また理事を監視したり重要事項を決定したりする権限を持つ評議員が3人以上必要で、その評議員による評議員会を設置しなければなりません。さらに、監事1人を別に選任しなければならないため、これらを合わせると最低でも7人以上の人員が必要であることになります。

これらを踏まえると、一般社団法人は財産の拠出も不要であり、社員が2人揃えば設立可能であることから、比較的設立や運営が容易あるのに対し、一般財団法人は拠出する財産も必要になり、かつ人員もより多く集めなければならず、規模が大きなもの以外は設立や運営が難しい団体であるといえます。

一般社団法人の基金とは

基金は、一般社団法人に認められた財政的な活動基盤となる拠出金のことです。一般社団法人は、その構成員である社員が財産的な拠出をしなくとも、設立が可能な法人形態です。とはいえ、法人を運営していくためには、一定の資金がなければ困難であることも多いでしょう。

このため、一般社団法人には「基金」という利用可能な制度が存在します。

株式会社の資本金と一般社団法人の基金

株式会社における資本金と類似しますので、ここでは株式会社の資本金と比較しながら、基金について説明します。

設立時の出資の有無

前述のとおり、一般社団法人であれば設立時に基金を必ず出資しなければならないわけではありません。このため、極端に言ってしまえば資金0でも設立することは可能です(登録免許税などの諸費用を除く)。

一方、株式会社の資本金は、設立発起人は必ず出資しなければなりません。もっとも、会社法の制定によって、資本金の額は1円から設立が可能になりました。そのため、設立時の拠出の有無は、ほとんど差がないといってもよいかもしれません。

出資と社員の区別

一般社団法人は、基金を出資する者と構成員である社員の地位は別ものと扱われ、基金を拠出したからといって一般社団法人の社員となるわけではありません。

一方、株式会社の資本金を出資した者は、その会社の株主となるため出資と株主たる地位は結びついたものとなっています。

返還の有無

一般社団法人の基金は、拠出者に返還する義務があります。その条件などは一定範囲で定款に定めることができますが、最終的には拠出者に返す必要のある負債的な性格の資金になります。

一方、株式会社の資本金は、出資者に返還する必要はありません。

一般社団法人の「法人」とは

法人(法人格)とは

法人というのは、普通の人間である「自然人」以外に、法によって権利や義務の主体となることができるようになったもののことです。この法人格があると、法人自体が土地を持ったり、契約をしたりすることができるようになります。

会社などが、会社自身の名義で土地を所有したり事務所を賃借したりできるのは、この法人格があるためなのです。

法人格がないことの短所

ところで、もし法人格のない集まりで財産を管理しようとすると、どのような事態になるでしょうか。おそらく、ひとまず構成員の誰かの名義で、その財産を管理するという状況になることが多いのではないかと思います。

その名義人がしっかり財産を管理してくれればよいのですが、形式上はその人の持ち物のように見えてしまいますから、勝手に処分してしまう可能性も否定できません。目に見えるかたちでその団体の財産が把握しにくいため、結果として取引相手などからも警戒されてしまうことにもなります。

法人格の必要性

規模が小さく、財産の管理や取引などがほとんどない団体であれば、法人格の取得は必要性を感じないかもしれません。

しかし上記のような理由から、団体自体が財産を所有・管理する必要に迫られたり、団体構成員以外の人と取引を行なう必要が生じた場合には、法人であることは大きなメリットとなってきます。

一般社団法人の活用

営利を追求するという性格の団体ではないから、株式会社を作る必要はない。しかし法人格があれば、法人自体が権利・義務の主体であるから何かと便利だな。

そんなとき、一般社団法人という法人形態は、大きな選択肢のひとつとなるでしょう。

公益認定とは

一般社団法人や一般財団法人が、公益社団法人や公益財団法人となるための行政庁の認定手続きを、公益認定といいます。

(公益認定に関する記事は、現在準備中です)

一般社団法人の特徴

株式会社や合同会社などの営利社団法人や、NPO法人や一般社団法人などの非営利社団法人など、世の中にはさまざまな法人形態が用意されています。多くの法人形態の中で、一般社団法人の特徴はどのようなところにあるのでしょうか。他法人と比較しつつ一般社団法人の特徴を挙げていきます。

非営利社団法人である

一般社団法人とはでも触れましたが、一般社団法人は営利を目的としない「非営利社団法人」ですから、構成員に利益の分配をすることができません。ただし、この非営利性は、公益性と同義ではありません。一般社団法人の場合、公益を目的とするものだけではなく、その社団の構成員の共益を図る目的でも設立・運営が可能です。

設立が比較的容易である

一般社団法人の設立は、定款を作成して公証役場で認証を受け、設立登記をすることによって完了します。この設立手続きは、株式会社の設立手続きとほとんど同様のもので、NPO法人のように行政庁の認証が不要なので手間や期間において比較的容易な設立が可能です。加えて、設立登記の際にかかる登録免許税も、株式会社と比較して低い金額で済みますので、コスト面においても設立の障壁が少ない法人形態といえます。

また設立面をNPO法人と比較すると、第一に、NPO法人は10人の社員(構成員)を集めなければ設立自体行なうことができませんが、一般社団法人であれば2名以上の社員がいれば設立することができます。第二に、NPO法人は行政庁による認証手続きなどが挟まるため、設立期間が数カ月に及ぶことになりますが、一般社団法人であればこの手続きは不要のため、数週間で設立して事業を開始することが可能です。

設立者の打ち出した方向性が維持されやすい

同じ非営利法人であるNPO法人と比較すると、NPO法人のほうは多くの参加者を募って、一緒に目的を達成していくための組織形態となっています。そのため、活動を続けるうちに法人の目的が変容したり、意図しない参加者が増えたりと、方向性が変わることも起こり得ます。

一方、一般社団法人は比較的小規模な構成員で運営することができますし、定款に規定をおくことで参加者を一定の条件を持つ者に限定することも可能です。そのため、設立者の意図した事業の方向性が、途中で思わぬ方向へ変容していくといった事態は防ぎやすいでしょう。

公益認定が可能

一般社団法人として設立した法人が、より公益性の高い事業を継続して営む場合には、公益認定を受けることで公益社団法人となることができます。公益社団法人は、税制面で各種の優遇措置が受けられますから、対外的にも内部的にも公益性を重視した運営が可能になるでしょう。

もっとも、公益認定の申請は多数の条件をクリアする必要があり、また必要となる書類の数や計算も膨大ですから、気軽に申請できるものではありません。また、認定を受けて公益社団法人となってしまうと、一般社団法人に戻ることは相当困難です。

公益認定による公益法人化は魅力も大きなものですが、前述のように、公益認定申請が可能であるというメリットは、一般社団法人を設立する時点から、しっかりと公益法人化を視野に入れて活動する法人でなければ、活用することが難しいものといえます。

一般社団法人とは

新しい社団や財団の制度

一般社団法人とは、平成20年に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」によって認められた、営利を目的としない社団に法人格を持たせるための組織形態です。

この法律の施行以前に社団法人や財団法人を新たに作ろうと思うと、公益を目的としていることが大前提であり、また設立の許可がその公益性の判断を含むものであったため、とても大変な手続きとなってしまいました。

一転、新しい法律の施行後は、社団や財団の設立と公益性の認定手続きが分けられたため、設立自体は株式会社の設立と同じくらい、身近で行ないやすいものとなりました。

営利を目的としない社団とは

一般社団法人は「営利を目的としない社団」ですが、営利を目的としないといっても、その法人が全く利益を上げてはいけないという意味ではありません。

一般社団法人であっても、物を売って利益を上げ、そこから従業員の給与などを支払うことができるのは、株式会社などの営利社団法人と異なりません。では何が異なるのかというと、利益を社員(従業員という意味ではなく、一般社団法人の構成員のこと。株式会社での株主にあたります)に分配することができないことです。

つまり、株式会社であれば利益を株主に配当金として分配することができますが、一般社団法人は非営利の法人ですからこれができず、利益は次の非営利活動への資金として利用していくことになります。

そもそも社団とは

ところで、一般社団法人の「社団」というのは、どのような意味でしょうか。

社団というのは、簡単に言ってしまえば「人の集まり」のことです。一般社団法人は、営利を目的としない非営利社団法人であり、対して株式会社などは営利を目的とした営利社団法人です。

人の集まりではなく、財産の集まりの場合には、社団ではなく財団といいます。財産の集まりというのはイメージしにくいかもしれませんが、一定の財産を核として、その財産を運用していくような場合です。

一般社団法人設立や設立後の運営でお困りの際は、まずはお電話にてご相談ください。初回相談は無料にて承っております。

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